遺言信託
Q 遺言信託とは何ですか?
A 信託銀行でよく目にする遺言信託の多くは遺言執行人を信託銀行が行い、遺言書を
信託銀行が預かるというものです。
これに対し、遺言による信託、遺言代用信託というものがあります。
この2つは信託の機能を利用して、死後の財産の管理、運用、分配、承継を
できるようにするものです。
遺言による信託は、被相続人が委託者となり、遺言により信託を設定します。
遺言ですので遺言者の単独意思で行われ、遺言者が死亡した時に信託の効力が
発生します。
法律上、公正証書遺言で作成することは規定されていませんが、遺言者の意思が
明確に証明できるよう、公正証書遺言にしておくことが実務上望ましいと思います。
遺言は遺言者の単独意思で行われるので受託者に指定された者が事前に話を知らないと
受託者を引受けないということも考えられるので事前に話をしておくことが必要です。
また、事前に話をしていても先に受託者が死亡していたり、認知症などにより判断
能力がない可能性もありますので第2受託者を指定しておくことも大切です。
通常の遺言でも同じことが言えますが遺言書を作成してから事情が変わり、
遺言の内容を変える必要がある場合があります。
遺言代用信託の場合、原則として内容を変更する場合は、委託者、受託者、受益者の
合意が必要です。遺言の効力が発生した時は委託者はすでに死亡しているので
遺言の内容で受託者と受益者で変更できるよう定めておくといいでしょう。
遺言代用信託は委託者と受託者で信託の契約をし、遺言と同様の効果を得させる
というものです。
委託者が死亡するまでは委託者を受益者とし、委託者死亡後は信託契約で定めた者を
受益者とすることにより、遺言と同様に委託者死亡後の受益者に財産を給付させる
ことができます。
注意する点としては、財産を引き継がせたい受益者を受託者とした場合で受託者と
受益者が同一になった状態が1年以上続くと、信託が強制的に終了します。
この場合は受益者を2名にするなど工夫が必要です。
遺言による信託と同様公正証書にしておくことが実務上望ましいと思います。
遺言代用信託の場合委託者の生前に財産が受託者名義になるので、委託者が
認知症などになってしまったため資金が必要になったので不動産の売却を
するのに後見制度を利用しないと売却できないといったことがなくなります。
ただ、生前に受託者名義になってしまうことに抵抗がある方も多く、そういった
場合は先に述べた遺言による信託がよいと思います。