遺言のQ&A
目次
Q 遺言には何種類かあるみたいですが詳しく教えてください
A 遺言には普通方式に従った遺言が3種類、普通方式による作成が期待できない場合を
規定した特別方式の遺言が4種類民法で定められています。
ここでは実務的によくある普通方式の遺言2種類について述べていきます。
1自筆証書遺言
まずは自分で自筆して書く遺言です。条件としては全文、日付、氏名を自筆し、印を押す必要があります。
また、加除その他の変更は、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、
かつ、その変更の場所に印を押さなければ、効力が生じません。
実際に自筆証書遺言を使う場合は家庭裁判所で検認の手続きが必要になります。
2公正証書遺言
公正証書遺言は証人2人の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人の面前で口授し、それに基づいて公証人が作成するものです。
ただ、実務的には事前にお客様に内容を確認してもらい、公証人と打ち合わせをし、当日は打ち合わせ通りの遺言者が作成されているので、
公証人が読み上げた内容でよければ実印を押印してもらい、証人2人が押印するという流れになります。
身体的不自由で字が書けなかったり、耳が聞こえなかったりする場合でも公正証書遺言を作成することができます。
公正証書遺言の原本は公証役場に保管されるため紛失、破棄、変造などの心配もなく、自筆証書遺言と違い検認手続きを経ずに
相続手続きに使えるので当事務所で相談をいただいた方は公正証書での作成をすすめています。
Q 公正証書遺言の作成に必要な書類を教えてください。
A 下記の書類が必要になります。
1 遺言者の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)及び実印
2 遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本
3 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票
4 証人の免許証の写し及び住民票並びに認印
5 不動産が含まれる場合には、登記事項証明書及び固定資産評価証明書
6 その他財産がわかる資料の写しなど
証人は2人必要です。ただし、未成年者、推定相続人、受遺者、
これらの配偶者及び直系血族など
相続に関係する人は証人にはなれません。
当事務所へ依頼いただいた場合は1人12000円の費用が発生しますが
当職と事務員で証人をさせていただきますので証人を探す必要はありません。
Q 自筆証書遺言の書き方を教えてください
A 自筆証書遺言は法律で決められた要件を満たさないと無効になりますので
注意が必要です。
自筆証書遺言は以下の3つの要件を満たす必要があります。
1 全文を自分で書く
2 遺言書の作成日を記載する
3 署名押印をする
以上の要件を満たさない場合とは1については、ワープロやパソコンなどで作成した場合
2については、何月吉日など日付が特定できない場合などです。
自筆証書遺言で使う印鑑は実印でなくても法律的には有効ですが後々のトラブル防止のため
実印を使用することをおすすめします。
もし、字を間違えた場合などに訂正するときは法律で決められた訂正方法でないと訂正が認められません。
訂正方法は訂正部分が読めるように二重線で消し、正しい文言を入れて、遺言書で使用した印鑑を押印する。
そして欄外余白に「何行何字削除何字加入」と記載し、署名をする。
訂正方法を間違えていると訂正はなかったものとなりますので実務的には面倒でも書き直しをすることをおすすめします。
その他要件は整っているが内容的に不備があり手続きに使えなかったなど当事務所で経験していますので、
そうならないためにもご相談ください。
Q 遺言の必要性が高いケースを教えてください
A 1 夫婦間に子供がいない場合
夫婦間に子供がいない場合配偶者は常に相続人になりますが、子供がいない場合
第2順位、第3順位がいればその者が相続人になります。
死亡した配偶者に兄弟が多く、しかもすでに何人か死亡している兄弟がいれば甥、姪までも
含んだ者が相続人となり人数が多数になることがあります。
兄弟姉妹には遺留分という最低限保証された相続権がありませんので
遺言ですべての財産を妻に、夫にというよう夫婦相互遺言をして置けば
配偶者にすべての財産がいくことになります。
なお、夫婦相互遺言といっても1枚の紙に2人で書くと無効となりますので
それぞれ別に遺言を残すようにしましょう。
2 再婚して先妻の子と後妻がいる場合
この場合は相続人としては後妻と後妻との間に子がいればその子を含め
先妻の子も平等に相続権が発生します。
このような場合には、遺留分に注意しながら遺言書を作成する必要があります。
3 認知していない子がいる場合
女性の場合は分娩の事実で親子関係が発生しますが、男性の場合婚姻関係にない
女性との間に生まれた子は認知をしないと親子関係が発生しません。
そのため、男性の場合認知していない子に相続させたい場合は生前に認知をしておくか
生前に認知するのが難しい事情がある場合には、遺言に認知する旨を記載しておけば
その子に相続させることができます。
4 長男のお嫁さん、長女の旦那さんに相続させたい場合
子供が2人いるケースで長男夫婦と2世帯で生活することになったが
長男は早くに亡くなってしまい、それからは長男のお嫁さんが長年
介護をしてくれたが長男夫婦には子供がいないといった場合、
親が亡くなった時相続権はすべてもう1人の子供へいきます。
こういった場合には遺留分に配慮して長男のお嫁さんへの遺贈を
しておくと現実的な平等が保たれると思います。
5 相続財産が自宅のみの場合
相続トラブルというと相続財産が多くある人に起こるものだと思っている人が
多いですが実務的によくあるのが相続財産が自宅しかない場合です。
家というものを現実に2つに分けることはできないので売却して金銭にかえて
その金銭を平等に分けるという方法もありますが、相続人の1人が同居している
場合などはなかなか難しいと思いますので他の相続人には代償として金銭を
支払えるよう生命保険などを利用したりして、事前にお金を用意しておく
必要があるでしょう。
6 内縁の妻がいる場合
内縁の妻は婚姻届をしていないため、法律上妻となりません。
そのため子供がいないような場合には夫婦と同様の生活をしていたとしても
内縁の妻には相続財産が一切いかないことになります。
そのため内縁の妻に財産を残したい場合は内縁の妻に対して包括遺贈など
遺言書を作成しておくことが必要です。
7 相続人がいない場合
相続人が全くいない場合は最終的には国へ相続財産は帰属します。
特別にお世話をしてくれていた人などがいた場合法律の規定により
財産を取得できる可能性がありますが、最短でも13カ月という期間が
必要であり、必ず取得できるとも限らないのでこのような場合は遺言書を
作成しておくとよいと思います。
あげたいと思う人がいなければお世話になった団体などに対して遺贈を
しておくといいでしょう。
Q 古い日付の公正証書遺言と新しい日付の自筆証書遺言はどちらが有効ですか?
A 遺言者はいつでも遺言の方式に従ってその遺言の全部または一部を撤回
することができます。(民法1022)
公正証書遺言と自筆証書遺言ではどちらが効力が強い弱いというものは
ありません。
この場合新しい日付のものが有効になります。
ただ、抵触していない部分はそのまま有効なものとなるので
前の遺言を全部撤回する意味で後日遺言を作成される場合は、
新しい遺言で前の遺言を撤回する旨を記載した方が後々のトラブルは
避けられると思います。
また、遺言が遺言後の売却等生前処分その他の法律行為と抵触する場合、
後の法律行為と抵触している部分について前の遺言を撤回したものと
みなされます。
ですので、遺言を書き直す必要もありませんし、遺言を作成した後
その内容と反する事実行為、法律行為をしても問題はありません。
Q 検認手続きについて教えてください。
A 検認とは相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言の
形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言の
内容を明確にして遺言の偽造や変造を防ぐことが目的です。
よく間違えた考えとして検認の手続きをした遺言は有効となると
いう考えです。
検認手続きはあくまでも検認した日にこういう遺言があったという
証拠保全の手続きになります。
ですので検認手続きをしたからといって必ずしも手続きで使えるか
どうかはわかりません。
Q 遺言信託とは何ですか?
A 信託銀行でよく目にする遺言信託の多くは遺言執行人を信託銀行が行い、遺言書を
信託銀行が預かるというものです。
これに対し、遺言による信託、遺言代用信託というものがあります。
この2つは信託の機能を利用して、死後の財産の管理、運用、分配、承継を
できるようにするものです。
遺言による信託は、被相続人が委託者となり、遺言により信託を設定します。
遺言ですので遺言者の単独意思で行われ、遺言者が死亡した時に信託の効力が
発生します。
法律上、公正証書遺言で作成することは規定されていませんが、遺言者の意思が
明確に証明できるよう、公正証書遺言にしておくことが実務上望ましいと思います。
遺言は遺言者の単独意思で行われるので受託者に指定された者が事前に話を知らないと
受託者を引受けないということも考えられるので事前に話をしておくことが必要です。
また、事前に話をしていても先に受託者が死亡していたり、認知症などにより判断
能力がない可能性もありますので第2受託者を指定しておくことも大切です。
通常の遺言でも同じことが言えますが遺言書を作成してから事情が変わり、
遺言の内容を変える必要がある場合があります。
遺言代用信託の場合、原則として内容を変更する場合は、委託者、受託者、受益者の
合意が必要です。遺言の効力が発生した時は委託者はすでに死亡しているので
遺言の内容で受託者と受益者で変更できるよう定めておくといいでしょう。
遺言代用信託は委託者と受託者で信託の契約をし、遺言と同様の効果を得させる
というものです。
委託者が死亡するまでは委託者を受益者とし、委託者死亡後は信託契約で定めた者を
受益者とすることにより、遺言と同様に委託者死亡後の受益者に財産を給付させる
ことができます。
注意する点としては、財産を引き継がせたい受益者を受託者とした場合で受託者と
受益者が同一になった状態が1年以上続くと、信託が強制的に終了します。
この場合は受益者を2名にするなど工夫が必要です。
遺言による信託と同様公正証書にしておくことが実務上望ましいと思います。
遺言代用信託の場合委託者の生前に財産が受託者名義になるので、委託者が
認知症などになってしまったため資金が必要になったので不動産の売却を
するのに後見制度を利用しないと売却できないといったことがなくなります。
ただ、生前に受託者名義になってしまうことに抵抗がある方も多く、そういった
場合は先に述べた遺言による信託がよいと思います。
Q 公正証書遺言に記載ミスがあった場合どうしたらいいですか?
A 公正証書遺言の作成の過程で誤記があった場合は文字の訂正をします。
その方法は公証人法38条に規定されています。
文字の挿入をするときは、その字数及びその箇所を欄外又は末尾の余白に
記載し、公証人及び嘱託人又はその代理人が押印することが必要です。
文字の削除をするときは、その文字を鮮明に読み取れる状態に字体を残して
訂正と同じ方法で削除します。
司法書士が一番遭遇するのはいざ遺言を使って不動産の名義を変更しようと
した場合に明らかな誤記があり登記手続きにそのまま使えるかということです。
作成時の添付書類などから明らかな誤記である場合は公証人から誤記証明書
を作成してもらい、登記手続きを進めます。
この誤記証明書は法律上の根拠を有するものではありませんが実務上定着
しています。
なお、誤記証明書の作成には費用はかかりません。